出会えたり出会えなかったり　season4

少し本腰を入れないとまずいと思い、ダメ元で中川さん案件のクライアントを訪ねてしまいました。M65を捨てた中川さんから受けた「あとは適当に展開しなよ」というメッセージを忠実に守った感じです。

そのクライアントは熱帯雨林の真ん中に開けた謎のシティにあります。ハクション大魔王のように怒る上司をもつ福田さんという人が窓口です。受付のけいこさん比－３００％ぐらいのレベルの女性にとりついでもらい福田さんに面会しました。

「残念ながら２月後半まで予算が見えてこないんですよねー」

福田さんは心底残念そうにそう言いました。ほんとに親身になってくれてるみたいな残念がり方だったので（福田さんて、やっぱええ人）と少し感動しました。

「あのひと、こないだ吸殻入りのビールのんだんですよ。うひひひひｈ」

でもやっぱり福田さん、病んでるって感じです。

そんな福田さんですが親身さは本物みたいで、別の部署を紹介してくれる事になり、シティの中でもひときわそびえ立つビルのまだ僕が未経験の高さのフロアへ連れていってくれました。

そのフロアに福田さんの同期の菊池さんという人がいて、実は結婚式のプランをずっと考えていて最近不眠症になりかかっている、とのことでした。菊池さんを紹介してもらい低く垂れ込めるぐらいの雲よりは高いところにあるんじゃないかってくらいのロケーション設定のラウンジで少し話しました。

菊池さんは４月に結婚を控えてますができればプランにとらわれない全部菊池っぽい感じの式を上げたいそうです。それは婚約者も同じ考えで菊池さんのことをクリエイティブな意見で溢れている人であると信じて疑わない彼女はウェディングプランを菊池さんに丸投げしてきたそうです。いつもは僕達みたいな底辺業者に丸投げな菊池さんですが今回は丸投げされてます。

１ヶ月ほどで菊池さんのメンタルはちょっとまずい領域へ差し掛かってるようで、「ああ、もう、限界」と初めて面と向かったはずの僕にさえ弱音を吐いてました。

「やりましょう」

僕は即決で菊池家ウェディングプランを受けて立ちました。予算ははした金なんで会社としては請けられませんが（イベント会社　ヒロシ）としてなら十分なギャラになると睨んでます。

中川さん案件のせいでくたくたでしたがまた再びやる気が湧いて来ました。